ここから本文です

COLUMN

2020.8.7

最近よく耳にする、次亜塩素酸水とは?

次亜塩素酸水とは?

最近「次亜塩素酸水」という言葉をよく耳にします。次亜塩素酸水とは、どのようなものなのでしょうか。

はじめに

次亜塩素酸水は、最近NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)において検証が行われ、2020年6月26日新型コロナウイルスの消毒に対しての最終報告として、「次亜塩素酸水は有効塩素濃度35ppm以上で有効と確認された」という発表※1がありました。
次亜塩素酸水は、ドラッグストアやホームセンター、インターネットなど身近なところで手に入れることができます。名称やパッケージが似ていても異なる作用・使用方法のものもあるので、購入・使用の際に混同してしまわぬよう注意が必要です。

「次亜塩素酸水」という名称は、多義的に使用されており、検索すると色々な意味を含んだ製品が出てきます。ここでは、経済産業省の「『次亜塩素酸水』等の 販売実態 についてのファクトシート※2」で便宜上使用されている表現である「電気分解法で生成されたものを電解型次亜塩素酸水、電気分解以外の製法で生成されたものを非電解型次亜塩素酸水」という2種類を、次亜塩素酸水として紹介します。

次亜塩素酸水とは?

除菌スプレー

そもそも「次亜塩素酸水」という言葉は、いつから使われるようになったのでしょうか。「次亜塩素酸水」という名称は、2002年に殺菌料として食品添加物に指定※3された時に付けられました。食品添加物として指定された次亜塩素酸水は、経産省ファクトシート上で呼称される電解型次亜塩素酸水のうち、pH、濃度(ppm)が規定範囲であるものを指します。
また、「次亜塩素酸水そのものは流通しない。」とも記載※3されていることから、「次亜塩素酸水」として販売されている商品は、食品添加物ではないと言えます。

【電解型次亜塩素酸水】

塩化ナトリウム水溶液や塩酸を電気分解して作られる、次亜塩素酸(HOCl)を主成分とした酸性~中性の電解水です。pH・濃度が調整してあり、希釈(水で薄める)せずに使用できるものもあります。特定のウイルスや菌(臭いの原因となる菌など)への除菌効果があります。

【非電解型次亜塩素酸水】

非電解型次亜塩素酸水は、電気分解以外の製法で作られており、複数の製法があります。次亜塩素酸ナトリウムに希塩酸または希酢酸と水を混ぜて適正なpHに調整した(中和させた)ものや、次亜塩素酸ナトリウムに炭酸ガスを混ぜる方法、イオン交換樹脂を使用し化学反応で作る方法、粉末を水に溶かす方法などがあります。
次亜塩素酸を主成分としており、殺菌力・用途なども電解型次亜塩素酸水と同程度です。また、電解型次亜塩素酸水に比べて有効期限が1年程度と長い商品や、医薬品として分類される商品もあります。

次亜塩素酸水を使用するときの注意点

冒頭でNITEの報告に触れましたが、経済産業省も2020年6月26日「次亜塩素酸水」を使うときの注意事項について発表しています。※1※4
発表された内容のうち、家庭で使用する際に気をつけたいポイントをまとめました。

  • 1)有効塩素濃度(単位ppm)により使用方法が異なる

    殺菌効力のある塩素系薬剤を“有効塩素”といい、ppmという単位で表す

    ・流水でかけ流す場合
    有効塩素濃度は、 35ppm(0.0035%)以上のもの
    ・拭き掃除に使う場合
    有効塩素濃度 80ppm(0.008%)以上のもの

    ※元の汚れがひどい場合は200ppm以上のものを使用することが望ましい

  • 2)使い方のルールを守る

    ・流水でかけ流す場合
    ①汚れ(手垢や油脂等)をあらかじめ落としておく
    【注意】目に見える汚れはしっかり落とす
    ②次亜塩素酸水の流水で、消毒したい物に20秒以上掛け流す
    【注意】次亜塩素酸水の生成装置から直接、流水掛け流しを行う。アルコールのように少量をかけるだけでは効かない
    ③ 表面に残らないよう、きれいな布やペーパーで拭き取る
    ・拭き掃除の場合
    ①汚れ(手垢や油脂等)をあらかじめ落としておく
    【注意】目に見える汚れはしっかり落とす
    ②十分な量の次亜塩素酸水で表面をヒタヒタに濡らす
    【注意】アルコールのように少量をかけるだけでは効かない
    ③20秒以上時間をおき、きれいな布やペーパーで拭き取る

また、医薬品又は医薬部外品として認可された商品は手指消毒として使用できるものの、NITE発表の新型コロナウイルスの消毒に関する報告では、手指消毒に対しては評価されていないことも考慮したほうがよさそうです。

電解型次亜塩素酸水、非電解型次亜塩素酸水ともに消臭効果があり、スプレーボトルでの販売も多く見られます。
人がいない状態で対象物に噴霧することは問題ありませんが、人がいる状態で、加湿器で広く空間に噴霧するようなことはWHO(World Health Organization 世界保健機構), 中国国家衛生健康委員会の見解※2からも推奨されていません。
CDC(Centers for Disease Control and Prevention アメリカ疾病予防管理センター)の見解では、消毒目的で空間噴霧をすることについて、効果不十分な方法であるとし、現時点では推奨されていません。噴霧は健康被害を招く恐れもあり使い方には注意が必要です。

次亜塩素酸ナトリウムとは?

次亜塩素酸水に近い名称に「次亜塩素酸ナトリウム」があります。
次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性であり、塩素系漂白剤としても使用され、家事用手袋やマスクの着用が推奨されています。商品パッケージの説明などを確認した上で、水で希釈など、適切な使用が求められます。

次亜塩素酸水(電解型次亜塩素酸水と非電解型次亜塩素酸水)と次亜塩素酸ナトリウムの違いについて

上で紹介したように、次亜塩素酸水である電解型次亜塩素酸水と非電解型次亜塩素酸水は、製法やpHは多少異なるものの同様の働きをします。
一方、次亜塩素酸ナトリウムは他の2つに比べpHが高く、除菌のメカニズムが異なります。※5
次亜塩素酸水のような、酸性~弱アルカリ性においての除菌因子は、多くが次亜塩素酸分子(HOCl)と、少量の次亜塩素酸イオン(OCl-)です。次亜塩素酸イオンは菌の細胞壁を透過できないのに対し、次亜塩素酸分子は細胞壁と形質膜の透過が可能であり、細胞の中に入ることで菌を死滅させます。
次亜塩素酸ナトリウムのような、アルカリ性においての除菌因子は、商品として販売される時にアルカリ性を保つ為に添加された水酸化ナトリウム(イオン化した水酸化物イオン(OH-))と、次亜塩素酸イオン(OCl-)です。
水酸化物イオンは、細胞壁や形質膜を部分的に分解し、細胞の表面の構造を傷つけることで、水酸化物イオンとの相乗効果で次亜塩素酸イオンの反応性が増し、菌の細胞内の必須酵素を酸化、菌を死滅させます。

電解型次亜塩素酸水、非電解型次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウムの特徴

右にスクロール→
一般名称 電解型次亜塩素酸水 非電解型次亜塩素酸水
(二液混合製法の場合)
次亜塩素酸ナトリウム
商品分類 日用品/食品添加物 日用品/医薬品 日用品/医薬品
用途 除菌・消臭 除菌・漂白
原料 塩化ナトリウム(食塩)、
次亜塩素酸ナトリウム、
希塩酸・または希酢酸、水
塩素、水酸化ナトリウム
成分 次亜塩素酸(HOCI) 次亜塩素酸イオン(OCl-)、水酸化物イオン(OH-)
一般商品では水酸化ナトリウムは5%以下
pH/次亜塩素酸濃度
(ppm)
【微酸性】pH5.0~6.5、10 ~80ppm
【弱酸性】pH2.7~5.0、10 ~60ppm
【強酸性】pH2.7以下、20 ~60ppm
厚生労働省で定められた数値で規定(食品添加物の場合) 食品添加物指定以外の商品ではpHやppmの規定はない為200~500ppm前後の高いものがある
弱酸性200~500ppm前後の高いものがある。食品添加物ではない為、pHやppmの規定はなし。 pH12以上。
原液で10000~50000ppmのものが多い。希釈して100~200ppm以上で使用。
使用方法 ・35ppm以上の次亜塩素酸水で20秒以上の流水
・80ppm以上で20秒以上ヒタヒタに濡らす、または浸漬の後、拭き取り
[注意]詳しくは2020年6月26日に発表された注意事項を参照ください。
希釈して浸漬や拭き取り
除菌効果 O-157、緑膿菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌などのグラム陰性病原菌、黄色ブド ウ球菌、MRSA、ノロウイルス(ネコカリシウイルス)、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス等
[注意]商品のpH、次亜塩素酸濃度、使用方法によっては効果が得られない場合もあります。
安全性 一般に販売されている商品は弱酸性・微酸性であり刺激が少ないとされており、皮膚刺激性試験実施済みのものもある。※すべての方に刺激がないわけではないので、塩素など過敏な方は使用を控える。酸性のものと混ぜるとpHが下がることで(有毒ガス)塩素ガスが 発生する可能性があるので注意が必要。 酸性液と混ぜ有毒ガス (塩素ガス)が発生する。刺激性があり、手袋マスク装着と換気が必要。残留塩素により環境に影響がある。

※1※4※5※6のURLを参照
※非電解型次亜塩素酸水は二液混合タイプの製法について記載

効果の発揮には、適切な使用が大切

適切な使用が大切

「次亜塩素酸」の言葉がついた商品は現在多く販売されており、それぞれの商品の特徴にあわせた使用が必要です。
例えば、リネンや食器などの除菌・漂白には次亜塩素酸ナトリウム。病室やトイレなど臭いが気になる場所の清掃と消臭、高齢者や子ども、ペットが近くにいる環境で使用する場合は電解型次亜塩素酸水または非電解型次亜塩素酸水。などのように、使い分けることができます。
また、購入の際は、製法や原料、pH・濃度、有効期限が明記されているかを確認すると安心です。※1※2
NITEや厚労省、WHOの発表する最新の情報に基づいた正しい知識を身につけ、健康被害を招かないよう適切な使用を心がけていただければと思います。

参考URL

ペットのニオイ対策はこちら

QAIS サンスター

著者情報

空気とニオイのお役立ち情報編集部

日常を快適にする、空気とニオイに関するお役立ち情報を発信いたします。

QAIS SUNSTAR

関連記事

監修:
山形大学医学部付属病院教授 検査部・感染制御部部長 森兼啓太
編集:
看護師 熊杏里・佐藤幸子 ライター:齋藤純子

記事一覧へ